HOME の中の (> ガイドライン の中の (> 1.補装具費の支給における「重度障害者用意思伝達装置」(制度概要) - 1.2 制度の解説と解釈のポイント

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1.2 制度の解説と解釈のポイント

 今回の改正では、車いすや補聴器など他の補装具同様に、その機能等により名称等を区分しただけでなく、旧の購入基準の中では不明確であった内容に関して、それを整理する具体的な記述があります。今回の改正点を含め、告示の解釈については、指針を参考にすると、以下のように整理できます。

【名称(方式)区分の概略と対象者例】

 旧の購入基準では、備考として「ソフトウェアが組み込まれた専用機器及びプリンタで構成されたもの、もしくは生体現象(脳波や脳の血液量等)を利用して「はい・いいえ」を判定するものであること。」とされていた2つの意思伝達の方式が、明確に区分されました。特に、「文字等走査入力方式」に関しては、機能に応じての細分化も行われました。

(1)文字等走査入力方式

a.意思伝達機能を有するソフトウェアが組み込まれた専用機器(簡易なもの)

 「意思伝達機能を有するソフトウェア」は、購入基準の備考欄にあるような「ひらがな等の文字綴り選択による文章の表示や発声、要求項目やシンボル等の選択による伝言の表示や発声等を行うソフトウェア」と具体化されました。

<対象者例(指針より)>
 操作が簡易であるため、複雑な操作が苦手な者。モバイル使用を希望する者でも対象となる。
b.aに通信機能が付加されたもの

 aの基本構造の付加機能にあたる通信機能は、購入基準の備考欄にあるように「生成した伝言を、メール等を用いて、遠隔地の相手に対して伝達することができる専用ソフトウェア」と示されています。

<対象者例(指針より)>
 通信機能を用いて遠隔地の家族等と連絡を取ることが想定される者。
c.aに環境制御機能が付加されたもの

 aの基本構造の付加機能にあたる通信機能は、購入基準の備考欄にあるように「機器操作に関する要求項目を、インタフェースを通して機器に送信することで、当該機器を自ら操作することができるソフトウェア」と示されています。

<対象者例(指針より)>
 独居等日中の常時対応者(家族や介護者等)は不在などで、家電等の機器操作を必要とする者。

(2)生体現象方式

 これは、「生体信号の検出装置と解析装置で構成され、生体現象(脳波や脳の血液量等)を利用して「はい・いいえ」を判定するものであること。」と示されています。

<対象者例(指針より)>
 筋活動(まばたきや呼気等)による機器操作が困難な者。

【解釈のポイント】

(1)文字等走査入力方式の具体化

 旧の購入基準では、「ソフトウェアが組み込まれた専用機器」となっていて、どのようなソフトウェアが意思伝達装置に該当するのか、その要件が具体的に記述されていませんでしたが、

  • ひらがな等の文字綴り選択による文章の表示や発声
  • 要求項目やシンボル等の選択による伝言の表示や発声

等を行うソフトウェアのように、具体化され、購入基準の備考欄に示されています。この内容により、意思伝達装置としての、最小要件が明確になったと考えられます。

(2)文字等走査入力方式における付加的な機能

 旧の購入基準では、意思伝達装置において、遠隔地にいる相手に対する意思伝達や環境制御機能を含むことが可能かどうかは、明確ではありませんでしたが、前述のように文字等走査入力方式の具体化が行われたことにあわせて、付加的な機能として

  • ① 生成した伝言を、メール等を用いて遠隔地の相手に対して伝達することができる専用ソフトウェア
  • ② 機器操作に関する要求項目を、インタフェースを通して機器に送信することで、当該機器を自ら操作することができるソフトウェア

の2点が、付加的な機能として具体化され、購入基準の備考欄に示されています。
なお、これらの付加的な機能が、意思伝達装置の付加機能と考えられる背景等は、以下のとおりと考えられます。

① メール等を用いて遠隔地の相手に対して伝達

 意思伝達装置が開発された当初は、一般社会にはインターネットやパソコン通信という通信インフラが無く、意思伝達装置を使って意思表現する相手は「目の前に実在する人」であり、その人への意思表示を行う装置でしかなかったといえます。しかし現在では、パソコンや携帯電話でのメール機能が広く一般的になり、通常の生活の中では、目の前にいない人への当たり前のコミュニケーション手段となってきました。
それゆえ意思伝達装置を利用する重度障害者にとっても、目の前の人への意思伝達だけでなく、メールによる遠隔地の人への意思伝達と考えれば、メール機能を無条件に排除する理由にはならないといえます。

ここで考慮する必要があるのは、目の前の人への欲求の伝達などの意思伝達と、遠隔地の人への意思伝達の内容には相違があるということです。遠隔地の人への意思伝達は、欲求の伝達に対して何かの対応を求めることのように、緊急性を要する対応にはならないものであるといえます。
 しかし、介護する家族等が不在時において、家族またはその他の介護者に要件(そろそろ戻ってきて欲しいなど)を伝えたい場合において、電話等の利用ができないことからメール送信による呼び出しは、現在の社会においては一般的な意思表示といえます。あるいは、音声対応モデムより電話回線を通して、遠隔地の相手に読み上げる方法も技術的には可能かと思います。
 このような利用方法も想定すれば、メール機能は十分に意思伝達機能といえます。ただし、メールを送信する相手の存在という生活環境の把握が必要であるとともに、通信回線の確保の問題から、必ずしも必須機能ではない(付加機能)と考えることが妥当といえます。

② 当該機器を自ら操作

 他者へ「欲求の伝達(要求)」という意思伝達を行った場合、目的は、「伝えること」ではなく、その結果としての「欲求の実現」であるといえます。このとき、「欲求の実現」が可能であれば、他者が介在することなく「欲求の実現」ができてもよいといえます。例えば、「電気を消してほしい」などの機器操作に対する要求であれば、直接、機器操作ができてもよいことになります。それゆえ環境制御機能を積極的に排除する理由にはならないといえます。

しかし、多くの高位頸髄損傷者のように、発語機能には問題なく四肢麻痺により、機器操作を介助者に要求しなければならない人の場合、本来の「意思伝達」の機能は対象外(不要)でありますので、意思伝達装置としては支給対象外となります。この場合、音声言語機能が喪失しているか否かが、判断のポイントであり、「環境制御装置」が必要だからという点からのみの判断で、支給対象とすることにはならないといえます。

(3)付属品について

旧の購入基準の中では、「プリンタ」のみが付属品とされていましたが、遠隔制御装置の追加に加えて、修理基準の中のスイッチ等も付属品として位置づけられました。

① 文字等走査入力方式における「プリンタ」の取り扱いについて

 旧の購入基準の中では「・・・専用機器及びプリンタで構成されたもの」とされており、必須のように解釈できましたが、現行の運用でも、プリンタが不要な場合には装置に含まず(支給金額も購入基準額から減額)とされているところでした。
今回の改正でも同様の考え方ですが、他の付属品は修理基準で加算額が示されていますが、プリンタには加算額がないことで、不要な場合には支給金額も購入基準額から減額することが、明確になったといえます。
さらに、名称の区分にともない、プリンタが認められる場合は、文字等走査入力方式のみになりました。これは、意思伝達装置およびプリンタの組合せが、「代替筆記具」の延長上との解釈にて、付属品に含むという考えです。しかし、「発語装置」の延長上として利用すると、必ずしも筆記の代替として「プリンタ出力」を必要としない場合もあります。このとき、本体支給時にプリンタが不要であり支給しなかった場合でも、後日、利用者ニーズの変化などから希望がある場合には、追加で支給できるものとなります。
なお、プリンタは一般市販品とみなすこともできますが、改正前のガイドラインからも、この考え方については、以下のとおり整理しています。

  • 特定のプリンタ(専用プリンタ)であること。
        ※)専用機器であるため、他のプリンタドライバを組み込んだ場合は保証対象外。
  • ただし、長期に渡る使用等で、専用プリンタの販売が終了される等により、別のプリンタを支給せざるを得ない場合は、専用プリンタでなくても良いが、製造元が動作保証を行うことが望ましいこと。
  • プリンタは本体の購入基準額内に含むこと。
② 修理基準の取り扱いについて

旧の購入基準の中では、備考欄に「その他、障害に応じた付属品を修理基準の中から加えて加算」とされており、修理基準では、故障に対する修理だけでなく、障害に応じた付属品として、固定具や入力装置(操作スイッチ)があり、購入基準への加算額の根拠ともなっています。
今回の改正でも同様の考え方ですが、購入基準の付属品に「身体の障害の状況により、その他の付属品を必要とする場合は、修理基準の表に掲げるものを付属品とする。」と明記されています。 なお、操作スイッチは、初期導入時の付属品だけでなく、利用者の障害状況の変化(病状の進行)に応じて、その都度申請することができます。適切な操作スイッチを組み合わせることで、同じ意思伝達装置を継続して利用し続けることが可能になります。

(関連情報)
 意思伝達装置の使用に当たっては、操作スイッチの適合が必要不可欠であり、本体とスイッチの両方がそろうことで機器全体のシステムを構築していますので、障害状況の変化に合わせたスイッチの交換が「修理」として認められています。スイッチ交換の要否については、身体障害者更生相談所(以下、「身更相」という。)によるフォローアップ調査(⇒2.3参照)や、在宅への訪問リハビリテーションサービスなどで確認されることもあります。
補装具費支給制度においては、意思伝達装置を、補装具費の支給により購入している場合に限らず、要件を満たせば、障害者自立支援法施行以前(以下、「旧制度」という。)の日常生活用具給付事業や難病患者等日常生活用具給付事業等により給付されている場合や、本人が自費購入あるいは他人からの譲渡による入手の場合も、修理の対象とすることが可能です。
  但し、補装具費の支給により入手している場合以外においては、修理申請があった段階で、「指針における対象者の要件について」でまとめる、対象者に該当するかどうかの確認、つまり判定が必要です。

③ 文字等走査入力方式(環境制御機能を付加)における「遠隔制御装置」の取り扱いについて

  旧の購入基準・修理基準の中では、環境制御機能の扱いも明記されていず、その扱いが不明確でした。
今回の改正では、購入基準において、文字等走査入力方式(環境制御機能を付加)の付属品として「遠隔制御装置」明記されるとともに、修理基準において「遠隔制御装置」交換として追加され、加算額の根拠も示されました。

【注意すべき事項】

 環境制御機能を付加する本体の購入基準(本体価格)は従来通り(450,000円)であり、これに修理基準の遠隔制御装置(21,000円)が加算されると、最大471,000円まで認められることになります。
 しかし、すでに遠隔制御装置としての学習リモコン付きで450,000円以内で販売されている機種については、学習リモコン代が本体価格(販売価格)に含まれていると考え、修理基準額を加算しないと考えることが妥当です。

 判りやすい基準としては

  • 本体価格(429,000円) + 修理基準(21,000円) の積み上げで450,000円となる
  • プリンタ同様に本体価格(450,000円)の中に含む

のどちらかになることといえますが、価格を積み上げ式で明確にするためには、前者の基準となることが望ましいといえます。

(4)「専用機器」の考え方について

専用機器とは、「意思伝達装置として製造された機器」というイメージがありますが、実際には「パソコンを主要なハードウェアとしてソフトウェアを組み込んだ機器」もあります。ソフト及びハードが一体型の専用機器は、フリーズ等のトラブルが少ないことが大切であり、単にパソコンをベースとして、いろいろなソフトウェアを組み合わせたもの(インストールしたもの)は専用機器に該当せず、安定動作までを保証した一体型の製品については、パソコンを本体の主要部品として用いることができると考えます
このように、「パソコンをベースとした意思伝達装置」の場合、以下の要件を満たす製品を「専用機器」と見なすことが妥当と考えます。

  • 本体の電源を投入した際に、自動的に「意思伝達装置の機能を有するソフトウェア」が起動し、終了時に、システム電源を終了できること。
  • 「パソコンを主要なハードウェアとしてソフトウェアを組み込んだ機器」であっても、あくまでも「専用機器」であるので、補装具事業者が、ソフトウェアおよびハードウェアの両者を含んだ機器全体のシステムとして修理対応する等の責務を負うこと。

(関連情報)
 利用者のご希望により、利用者が所有するパソコンに「意思伝達装置の機能を有するソフトウェア」をインストールして利用する場合には、そのソフトウェアにかかる購入費用は、特例補装具費としての対応は可能と考えますが、パソコン本体にかかる購入費および、その修理費は補装具費支給対象外と考えます。なお、操作スイッチ類等は、本体が専用機器(購入基準内)か、特例補装具かに関わらず、補装具費の支給対象と考えます。

(5)「生体現象方式」について

 生体現象として「脳の血液量」や「脳波」を利用して「はい・いいえ」を判定するものがあります。生体現象の変化を基に判定するものであるため、「能動的な意思伝達ではなく、支援者からの呼びかけへの応答という受動的な意思伝達」となりますが、「反応に時間がかかること」、「正確な意思が反映されていない場合もあること」、「本人の覚醒レベルによっても反応が異なる場合があること」等に留意し、有効性を見極めることが必要です。

(6)指針における対象者の要件について

各名称・基本構造についての該当者は、先に述べたとおりですが、指針においては

<対象者例(指針より)>
 重度の両上下肢及び言語機能障害者であって、重度障害者用意思伝達装置によらなければ意思の伝達が困難な者。

は、意思伝達装置を補装具費として支給する場合の対象者の共通事項(全般の対象者)ともいえ、2つの要件が示されています。

  • ① 重度の両上下肢及び言語機能障害者(障害状況)
  • ② 重度障害者用意思伝達装置によらなければ意思の伝達が困難な者(操作状況)

この解釈については、以下のように考えます。

① 障害状況について

 基本的には、障害認定を受け身体障害者手帳を保有している者が対象となると思われますが、「重度」の基準は明示されていません。したがって、その必要性の具体的判断は各都道府県・指定都市に設置された身更相の判定によることになります。

 重度の基準としては、支給決定を実施している各市町村の判断になります。ここで、具体的に、

  • 四肢体幹機能障害1・2級、音声言語障害3級
  • 身体障害者手帳1・2級で、両上肢に著しい障害がありかつ言語機能が喪失状態に相当
  • 病名の指定

などの要件を示しているところもありますが、指針では、障害等級を定めていませんし、このような一律の基準による判定は、制度の主旨にそぐわないと考えます。目安としての基準を示すことは必要な場合もあるかと思いますが、あくまでも、当該申請者の身体状況を判断し、「重度の両上下肢及び言語機能に障害があること」が確認でき、支給対象者になりうるのであれば、障害等級の再認定を求める必要はないと考えます。

 進行性疾患においては、申請時の状態のみが判断基準でなく、音声の完全喪失(障害固定)前であっても、進行を考慮して、支給対象とできることも考えられます。(状況によっては、「難病患者等日常生活用具給付事業」(A.4参照)の対象となる場合もあります。)これは、音声言語機能が完全喪失した後に、意思伝達装置の支給手続きを開始することで、実際の利用に至るまでに時間がかかり、家族等とのコミュニケーション手段が断たれてしまう場合があるからです。

 しかし、進行性疾患であったとしても、急速な症状の変化(状態の悪化)が予想されない場合、または長期にわたり(ゆっくりと)進行するような疾患の場合は、疾患名が「進行性~」であっても、支給時期が早期過ぎないように留意が必要です。

 あくまでも、「重度の両上下肢及び言語機能障害者」でなるか、間もなくその状態になることが意見書等で確実に判断できる場合が、対象となる障害状況と考えます。

② 操作状況について

 「重度障害者用意思伝達装置によらなければ意思の伝達が困難な者」が対象となります。「困難」のレベル等については、様々な障害状況や生活環境等の要素があるため、あえて明示されていませんが、障害状況の把握に当たっては、「手指等による文字盤の使用や、携帯用会話補助装置の使用が困難かどうか」を評価し、判断の参考としてはどうかと考えます。

 このとき、手指等による文字盤等の使用が短時間のみ可能であっても、意思を伝えるための十分な時間の使用が困難であれば、使用困難と評価することが妥当と考えられます。

 ただし、透明文字盤を見つめることで意思疎通を図っている方については、ケースによっては意思伝達装置と併用することで、円滑なコミュニケーションが可能となる場合もあります。透明文字盤の使用が可能な方は、意思伝達装置の支給対象外と判断することは適切でないと考えられます。

 総合的に評価する場合の例として、

  • 不随意運動のために固定された画面を見ることが出来ない方で、読み上げ機能を活用し粗大運動による1つのスイッチ入力によって意思伝達が可能。
  • 振戦が激しいために文字盤の指さし等が出来ない方で、操作スイッチ入力後に、一定期間反応しない(本体へ信号が出力されない)回路を加えることで、文字入力が可能。

などの場合は支給対象になり得るものと思われます。

 また、別の観点からまとめると、「重度障害者用意思伝達装置によらなければ意思の伝達が困難な者」ということは、「意思伝達装置の必要性が高い者」といい換えることができます。必要性と考えれば、単に操作できるか否かだけでなく、本人の意欲や、利用の有用性という生活環境面での判断も必要になると考えます。

 なお、基本構造の付加機能を有する装置を必要とする場合も、このような生活環境面での判断も必要です。

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